突然ですが、「考える」ということを考えたことはありますか?
実は私が「“考える”とはどういうことか」を考え始めたのは、小学校の3年生の時からです。きっかけはシャーロック・ホームズにハマったことでした。シャーロック・ホームズとはコナン・ドイルの小説に出てくる名探偵のことです。当時の私は、難解な事件の謎をパズルでも解くようにさらりと解明していくホームズに熱烈に憧れていました。「正しく考えないと真犯人は見つからない」と思い、では「“正しく考える”とはどういうことか」ということを考え始めました。このテーマはそう簡単なことではなく、それから延々と考え続け、あっという間に10年、20年と経っていました。
そして、私が30代の時、知り合いの経営者と二人で飲みに行った際、私はこれまで考えてきた「正しく考える」ということについて「3つのポイントがある」と熱く語りました。すると彼は「それって、安岡正篤先生の“思考の3原則”じゃないの」と言ったのです。安岡正篤先生とは、言わずと知れた著名な東洋哲学者で歴代の総理大臣のご指南役でもあり、「平成」の元号を発案した方です。「えっ!」と私は驚いて詳しく聞いてみると「安岡先生は“多長根(た・ちょう・こん)”と言って、多角的・総合的、長期的、根本的・本質的、この3つを“思考の3原則”と言っているよ」と教えてくれたのです。
調べてみると安岡先生の「活眼活学」という本の中にそのことが書かれていました。ショックでした。私が何十年もかけて考えてきたことが、すでにそこに書かれていたのですから。それから数日は呆然として過ごしましたが、「相手が安岡先生じゃ仕方がない」むしろ、「あの安岡先生と同じ結果になったのだから自分が考えた道筋は正しかったのだ」と思うようになりました。
その後、「思考の3原則」は「思考の5原則」へと発展し、現在では「思考の7原則」として確立しました。